アルバムの基本情報
タイトル (日本語) | ハード・デイズ・ナイト |
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タイトル (英語) | A Hard Day's Night |
発売日 | 【イギリス】1964年7月10日 |
最高順位 | 【イギリス】1位(21週) |
CD
デジタル音源(CD)が初めて発売されたのは1987年。2009年には音質を改善したリマスター盤がリリースされています。
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アルバム収録曲
アナログ盤・A面
- ア・ハード・デイズ・ナイト A Hard Day's Night
- 恋する二人 I Should Have Known Better
- 恋におちたら If I Fell
- すてきなダンス I'm Happy Just To Dance With You
- アンド・アイ・ラヴ・ハー And I Love Her
- テル・ミー・ホワイ Tell Me Why
- キャント・バイ・ミー・ラヴ Can't Buy Me Love
アナログ盤・B面
- エニイ・タイム・アット・オール Any Time At All
- ぼくが泣く I'll Cry Instead
- 今日の誓い Things We Said Today
- 家に帰れば When I Get Home
- ユー・キャント・ドゥ・ザット You Can't Do That
- アイル・ビー・バック I'll Be Back
アルバムの概要
アルバム『ハード・デイズ・ナイト』は、イギリスにおける通算3枚目の公式アルバムとして、1964年7月10日に発売されました。
1964年に劇場公開されたビートルズの初主演映画『ハード・デイズ・ナイト』のサウンドトラック盤を兼ねています。
収録曲の内訳、レコーディング期間
初の全曲オリジナル曲
収録曲は全13曲。今作は初めて「全曲がオリジナル曲」となっており、カバー曲は1曲も収録されていません。
アナログ盤A面の7曲は映画の中で実際に使用されており、アナログ盤B面の6曲は映画と関係のない新曲です。
オリジナル曲の内訳は、ジョンが10曲、ポールが3曲。
ビートルズのアルバムでジョンの楽曲がこれほどまでに多数を占めているのは唯一であり、ジョン・レノンの才能が爆発した時期であったと言えます。
前作『ウィズ・ザ・ビートルズ』で初めて自作曲が収録されたジョージの曲は今作では採用されておらず、また3作目にして初めてリンゴのヴォーカル曲が収録されませんでした。
レコーディングはフランス・パリで開始
レコーディング時期は、まず1964年3月20日に先行発売されたシングル「キャント・バイ・ミー・ラヴ」のレコーディングを1月29日にフランス・パリにて着手。
この頃ビートルズはフランスでコンサートツアー中。パリのスタジオに行ったメインの目的は「シー・ラヴズ・ユー」と「抱きしめたい」のドイツ語バージョンをレコーディングするためでした。
シングル以外のアルバム収録曲は、2月25日からレコーディングを開始しています。
メンバーによるレコーディングは6月2日までおこなわれ(レコーディング期間は3ヶ月と少々)、スタッフによる編集作業は6月22日までおこなわれています。
「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」という邦題について
1964年にアナログ盤のアルバムが発売された当初、邦題(日本語タイトル)は「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」となっていました。
原題はリンゴの「おかしな表現」がキッカケ
原題(英語タイトル)は「A Hard Day's Night」。直訳すれば「多忙な日の夜」となります。ちなみに英語の正しい表現ではありません。
文法的に正しい表現だと「Night of a Hard Day」になります。
「A Hard Day's Night」という表現はメンバー間の雑談でリンゴが発した言葉です。リンゴはときどきこういう「おかしな表現」を使っていたのだそうです。
リンゴが「ハードな一日だった(It's been a hard day)」と語って窓の外を見たらもう夜になっていることに気付き、「…の夜だ('s night)」と付け加えたのだとか。
その表現が面白かったので映画タイトルに決まり、ジョンが同じタイトルで曲を作った、というのが定説です。
邦題をつけたのは水野晴郎さん
それがなぜ「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」という、原題とかけ離れた、全然意味の違う邦題になってしまったのか。
この邦題を付けたのは、水野晴郎さん。当時はユナイト映画という会社の社員で、海外映画の日本語タイトルを付ける仕事もしていました。
水野さんは後に映画評論家となり、日本テレビ系列の「水曜ロードショー」「金曜ロードショー」に出演して人気者となりました。
『ハード・デイズ・ナイト』が日本で劇場公開されるよりも前、ビートルズを紹介するための『Beatles Come To Town』という映像が日本でも流れたのだそうです。
『Beatles Come To Town』は直訳すると「ビートルズが街にやってくる」。これを水野さんは「ビートルズの初主演映画」だと勘違い。
違う映画のタイトルを直訳し、さらにビートルズの特徴的フレーズ「Yeah!(イエー!)」を「ヤァ!」と翻訳して3つ重ね、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」という不思議な邦題が出来上がった、という顛末のようです。
水野さん本人の言葉を引用します。
ある朝ニューヨークから緊急電報が入った。
“ビートルズ主演映画、ユナイトで配給”
ただその1行である。題名もない。そのころようやく新聞紙上をにぎわしはじめたビートルズの名は知っていたものの、一体どんな映画が作られるのか。見当もつかない。
(中略)
資料がどんどん到着しはじめた。しかしまだまだ不安である。何しろ活字やタイプ文書ではなかなか内容がつかめないからである。
おまけに題名も決まらない。イギリスから言ってきた題名は『ビートルズが町にやって来る』というのである。日本題名も一応このタイトルにしておきましょう。
引用:『ビートルズってなんだ? 53人の“マイ・ビートルズ”』
水野さんは映画そのものを観ておらず(というか映画配給会社から映像資料が届いていなかった)、資料の中にあった別作品のタイトルを見て直訳してしまったようです。
題名はすこし長いけど「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」に決定した。最初のタイトルはもうファンの間に周知だし、本社側からの指令では、“ビートルズ”という言葉だけで一つのタイトルにしてはまかりならぬというのである。
そこで考えついたのが「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」。この意味について、あまりリズムを知らない大人たちは、挨拶に使うヤァ、ヤァという言葉かと勘ちがいしたようだ。
しかしファンの皆さんはすぐ理解してくれたように彼らの胸の中のリズムの言語化なのである。こんなとき日本語はむずかしい。リズムをそのまま文字にすることが出来ないからだ。
引用:『ビートルズってなんだ? 53人の“マイ・ビートルズ”』
初主演映画の邦題が付けられたことに伴い、シングル曲のタイトルも、そしてアルバムのタイトルも映画タイトルと同様に「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」と付けられ、日本ではとても長い間にわたって使われていました。
2000年に映画館で再上映された際、邦題が『ハード・デイズ・ナイト』と変更され、これに伴いアルバムの邦題も映画と同じ『ハード・デイズ・ナイト』に、曲の邦題は「ア・ハード・デイズ・ナイト」にそれぞれ改められました。
アルバムジャケットについて
アルバムジャケットの写真を撮影したのは、前作の『ウィズ・ザ・ビートルズ』に続いて写真家のロバート・フリーマンが担当しました。
デザインとしては、映画のフィルムを思わせるためにメンバー4人の写真を、上からジョン・ジョージ・ポール・リンゴの順で5枚ずつ並べています。
特に2段目のジョージがなかなか自由で、後ろ向きだったり、タバコを吸ってたりしています。
チャートの動き・順位変動
アーティスト名/ アルバム名(英語) | 1964年 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | ||||||||||||||||||||
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The Beatles / A Hard Day's Night | 3 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | 5 | ||
The Rolling Stones / The Rolling Stones | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 3 | 2 | 4 | 2 | 2 | 2 | 2 | 3 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 3 |
Cliff Richard / Wonderful Life | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 4 | 4 | 6 | 6 | 8 | 7 | 7 | 9 | ||||||||||
Jim Reeves / Moonlight & Roses | 7 | 3 | 2 | 5 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 | 2 | 3 | 3 | 4 | 6 | 6 | |||||||||||
The Beatles / Beatles For Sale | 4 | 1 | 1 |
ローリング・ストーンズのデビューアルバムから1位を奪う
『ハード・デイズ・ナイト』がイギリスのアルバムチャートに初登場したのは1964年7月の第3週で、初週は3位でした。
同じ週の1位は、ローリング・ストーンズのデビューアルバム『 ザ・ローリング・ストーンズ 』。1964年5月第1週に、それまで21週連続1位中だった『ウィズ・ザ・ビートルズ』から1位を奪い、以降は12週連続で1位を記録していました。
同じ週の2位は、クリフ・リチャード&ザ・シャドウズの『ワンダフル・ライフ』。ローリング・ストーンズとビートルズが強かったため、最高2位止まりとなりました。
『ハード・デイズ・ナイト』は、前作の『ウィズ・ザ・ビートルズ』と同じく21週連続で1位を獲得しました。
『ハード・デイズ・ナイト』から1位を奪ったのは、ビートルズ4作目のアルバム『ビートルズ・フォー・セール』でした。
ジム・リーヴス追悼アルバムがイギリスでもヒット
この期間中に他のアーティストで最高2位まで上昇した作品は、アメリカ・テキサス州生まれのジム・リーヴスがリリースしたアルバム『 ムーンライト・アンド・ローゼス 』。
アメリカでは彼にとって初めてとなるチャート1位を獲得し、イギリスでも最高2位が3週ありました。
ジム・リーヴスは『ムーンライト・アンド・ローゼス』が発売される直前の1964年7月31日、飛行機事故のためこの世を去っています。享年40歳。